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夏の名残を残したままにするな。
サイスコで夏のお題
風が窓から入り込む涼しい風。
夏が過ぎ去り、秋の風が心地良い。
今日は休日となっているスコールは、自分の部屋で雑誌を読んでいた。
さわさわと優しい風が入り込む窓を見上げ、微かに両目を細めた。
コーヒーを飲もうと湯を沸かそうと部屋を出ると、サイファーが雑誌を顔にのせてソファで横になっていた。
どうやらすっかり熟睡してしまっているようで、スコールはそれをちらりと横目で見つつ、カップに湯を注いだ。
簡単なインスタントコーヒーが出来上がると、目覚ましには程よい苦さが脳を刺激する。
規則的に上下する胸板を見つつ、いつの日かこのコーヒーを頭から浴びせてやろうと目論みつつ、読みかけの雑誌が待つ部屋に戻ろうとして、ふと気付いた。
窓に引っ掛かる程度につり下げられた夏の名残。
風に揺られて涼しげな音が鳴る。
既に夏も過ぎ去った今のこの時期には少しこの音は涼し過ぎる。
スコールはコーヒーの入ったカップを近くのテーブルに置くと、窓辺のそれをすぐに取り外した。
それをどうするかというと、スコールはそのままサイファーの部屋に勝手に入り、窓を開けて今し方取り外した夏の名残をつり下げた。
そしてそのままカップを再び手にして部屋に戻っていった。
「なぁスコール、夕飯どーする?」
「なんでもいい」
「それが一番困るんだっつーの…まぁいいや、適当に作る」
夕日が部屋を照りつける時間を過ぎ、部屋には明々と電気が点けられる。
サイファーがスコールの部屋に顔を出してそんな会話をしたのは1800時頃だった。
それからどのくらいの時間が経ったか、再びリビングに呼ばれたスコールは部屋の扉を開いて偶然視線を向けた。
『あるもの』を目撃し、とてつもなく嫌そうな顔をしたスコールに、サイファーは「どうした?」と訊ねる。
「…おい、これはどういうことだ?」
「ん?ああ、それか、持ってきた」
「俺はちゃんと取り外したのになんでそういう事するんだ、あんたは」
「なんでだよ、いいじゃねーか。俺それ好きだし」
「今の時期に合わないだろ…」
未だにぶつぶつ文句を言うスコールを椅子に座らせ、やっとディナータイムだ。
「…秋なんだから、夏から頭を切り替えろよな」
「ま、そうだな。秋も秋で悪い事はねぇしな」
「…その基準がわからないけど」
文句を言いつつも話をさり気なく聞いている様子のスコールの耳には、今でも風で揺れて涼しげな音を鳴らすそれを聞いていた。
「知ってたか?窓辺に風鈴つるすと幽霊が寄ってくるらしい」
「お前…それどんな嘘だよ、笑えねー」
「俺が嘘ついたこと、あったか?」
「………」
おまけつき。
『夏で10のお題:風鈴』
2008.10.09 (c)rlrl.
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