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memory of children

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記憶の歌

私の心の中に残る歌。




夢の中で聴こえる歌声。
暖かく柔らかいベッドのシーツ、香るのは新鮮な木の匂い。

目を覚ませば、暖かな日差しが部屋を柔らかく差していた。


「ジタン!おはよう!」

「ああ、おはよう。他の皆は?」

「コンデヤ・パタまで買い物なんだって、ボクは留守番だよ」

「そうなのか。…他のジェノムも?」

「うん、行商に興味がある子は一緒について行ったよ」

ジタンが宿屋から出てくると、小さな黒魔道士の子供がジタンに元気よく挨拶してきた。
小さなビビの子供達と呼ばれる黒魔道士の子供達はいつも元気で、村の中を仲間達と駆け回る姿は人間の子供となんら変わりはない。
最近ではジェノム達にも変化の兆しが現れ始めた。
自分だけの意思を持ち、好きなものや嫌いなものもはっきりしてきているようだ。
ジタンは黒魔道士の子供とその場で別れると、一軒の出来たばかりの家へと向かった。
無遠慮に扉を開けると、丁度目が合った。

「よ、おはよ」

「おはようジタン。いつも言ってるでしょう?入るときは扉をノックしてって」

「俺がわざわざ扉をノックして入ってくる男に見えるか?」

「…それもそうね。何か食べる?昨日の残りのスープしかないけれども…」

「大歓迎!いただきます!」

ジタンは部屋の中央にある木製の丸いテーブルの椅子に腰を下ろすと、彼女は棚からスープ皿を取り出してそこへスープを入れてジタンの前に出す。
ジタンは再び「いただきます」と言って出されたスープにスプーンを入れる。
彼女特製の栄養たっぷりのスープは村中でも評判がよく、もちろんジタンもその味に舌鼓を打つ。

「うーん美味い!ミコトのスープ最高だぜ!」

「何度も聞く言葉だけど、ありがとう」

ミコトはジタンの目の前で分厚い本を広げて今日も読書励むように視線を本へと落とす。
彼女が読む本は様々だ。興味を持てば何でも読む。
医学書でも哲学書でも天体書でもガーデニングの本でも料理本でも。
ジタンが顔を覗かせて本の中身を盗み見ると、どうやら今日は料理本らしい。
また新しく生まれるであろう新しい料理に期待しつつ、最後の一口を口に運んだ。
食事を終えたら皿を片付けるのが随分と板についてしまった。
食べたら食べっぱなしはミコトの怒りを買う事になる。
最近までそうやってよく怒られていたことをジタンは思い出す。
腹ごなしに森中を駆け回ってギルを稼ぐのも悪くはないが、この日はそんな気分ではなかった。
窓の外の太陽の木漏れ日を見つめながら、ぼんやりとしていた。
すると、ミコトがすっと本から視線を上げてジタンの後姿を見つめて目を細めた。

「…歌ね」

「え?」

「もしかして無意識に歌っていたの?器用なのね」

「あ、ああ…俺の知ってる歌はこれくらいしかないからさ」

ジタンは耳に残るあの心地よい声を思い出しながら再び歌い始めた。

「…優しい歌だわ」

「ああ…俺の大切な人がよく歌ってた」

寂しげな後ろ姿。流れる旋律は優しい記憶の中に埋まっていた歌。
自分が何者なのか、自分は一体何者なのか。
そんな疑問の答えが、全て隠されていた歌。

「…あなたの…大切な人…?」

「うん」

「そう…」

「あ、そりゃ俺はミコトの事も大切だからな?なんてったって俺の妹だからな!」

「べ、別に私はそんな事…!!ジタン、そういうことばっかり言っていると大切な人にいつか誤解されるわよ」

「うげっ、それはヤだな…」

ジタンは心底嫌そうな顔をしていると、ミコトはふふと笑みを浮かべて本を閉じた。

「私は森に行くわ」

「じゃ、俺も途中まで」

「…帰るのね?」

「劇団もあるからな。それに…なんだか会いたくなってきちまった」

「そう…見送りするわ」

ミコトが扉を開くと、ジタンはニッと笑って外へと出た。
ジタンの事を察した小さな黒魔道士達はジタンに駆け寄ってくる。

「ジタン、帰っちゃうの?」

「また遊んでくれる?」

「またお芝居見せてくれる?」

「今度はいつ遊びに来るの?」

小さな黒魔道士達が口々にそうジタンに聞くのをジタンは丁寧に一つずつ答えながら彼らに手を振る。
ビビを知る黒魔道士達も「気をつけてお帰りください」と挨拶をして村の外まで見送ってくれた。

ミコトは森を散策するのが最近の趣味のようで、森の出口までジタンを見送ってくれた。

「ここからどうやって帰るの?」

「うーんそうだなぁ……なーんてな、実はシドのおっさんが今日迎えに来てくれる事になってるんだ。ヒルデガルデ3号に乗せてもらって、そのままトレノでカードゲームやって、それからリンドブルグまで行くんだ」

「トレノ…知ってるわ、オークションやカードゲームなどの所謂ギャンブルが盛んな街ね」

「お、もしかして興味ある?」

「そうね…多少なりとは。本で読むだけでは解らないことはたくさんあるわ」

「そうか、じゃあ今度は一緒にカードゲームやろうぜ!」

ジタンがそう約束をした。
ミコトが頷くと、空からプロペラ音が聞こえてくる。
見上げれば丁度飛空艇が到着した。着陸した飛空艇からエリンが手を振っているのがわかる。
ジタンが手を振り返してミコトに別れを告げると飛空艇は空へを浮き上がり、迂回して空のかなたへ消えていった。

「…約束よ、ジタン」

青い空を見上げて小さく呟くミコトは、地平線から見え始めた仲間達と黒魔道士の姿を見つけて手を振った。
仲間達も同じように手を振り替えして、ミコトの方へ駆け寄ってくる。
そのまま会話を交えながら村へと向かう。
黒魔道士達が持つ甘い香りの果実や、仲間のジェノムが持つ新しい食器や料理器具に目を奪われる。
ミコトは今度ジタンが来るまでに新しい料理を完成させておこうと、密かに胸に秘めていた。



2008.07.08 (c)rlrl.

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