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memory of children

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恋になったばかりの話

「恋になる前の話」のカイン視点。




俺はこの日、竜騎士団を率いて遠方まで足を運んでいた。
それも済んで陛下にご報告をしてから部屋で寝ようと何度も出そうになった欠伸を噛み締めて我慢していた時だった。

「カイン!」

耳障りの良い声が俺の寝ぼけ半分だった脳髄を刺激した。
もちろん声の主は解っている、セシルだ。
振り向けばえらく上機嫌で俺の傍まで駆け寄ってくる。

「セシル。どうした?嬉しそうな顔をして」

「うん、すっごく良いことがあったんだ。カインこれから予定とか、ある?」

予定?部屋に帰って寝ようとは思っていたが、そんな寝ぼけもどこかへ飛んでいってしまった。
セシルの笑った顔を見ているとそれどころじゃない。
でも俺の脳はまだ睡眠を求めているようで、素直な返事しか出てこなかった。

「いや、帰ろうと思ってた所だ」

「明日は?」

「明日?明日は…これといって何も無いけど」

じゃあ、とセシルが続けざまにとんでもない事を俺に言った。

「今日は僕の部屋に泊まらない?」





俺はそのままセシルに引っ張られる形でセシルの部屋まで来てしまった。
まずい。
こんな部屋で、しかも二人きり。
今まで俺の気持ちは悟られないように上手くしてきたつもりだったが、今日のはさすがにかわしきれない。
だからと言って機嫌のいいセシルに今更”帰る”とも言い難い。
何があったかは知らんが、いつもの数倍よく笑っている。
くそ、帰るに帰れない。
どうも以前セシルの部隊にいた奴が仲間と世話になったセシルに色々バロンまで送りつけてきたらしい。
ファブール製の食器や特産品。俺でも知らないものの方が多い。
セシルは嬉々としてどんどん包みを開いてこれはどう使うのかとか、これは何だとか色々引っ掻き回し始めた。
俺はというと、慣れた環境下でしかも溜まった疲れがプラスしてまたしても睡魔が襲ってきた。
人間の三大欲にはどう抗っても逆らえないようだ。
だが、セシルが俺の目の前にファブールの特産品を突きつけて来てまたしても目が覚めた。
これも人間の三大欲の一つ、『食欲』。
新鮮な、それでいて芳しい香りが食欲をそそる、が、既にもう半分はセシルがあんぐりと大口を開けて少しだけ欠けているようで、俺もとりあえず一口食べてみる。

「なんだろ?なんだか解らないけど美味しい~~~~!」

「構造的にはパイに近い感じだ。…しかし美味いな」

異国の食べ物にそれほど興味を持ったことはないが、これはこれで美味い。
空腹も手伝ってその半分は瞬く間に目の前から消えていった。
セシルはよほど気に入ったのか、今度は自ら買いに行くと言い出した。
俺は暗黒騎士の鎧のまま、店で食い物を買うセシルを想像してついつい笑ってしまった。
芳しい香りの中に、真っ黒な鎧のセシルがアンバランスで笑いが止まらなかった。




「…カイン、ローザと仲良いんだね?よく二人で話ししてるの見るから」

セシルのそんな一言だった。
俺は内心ギクリとしながら見られていたのかと己の中で項垂れた。
ローザは俺の気持ちを知ってから最近よく近況を聞きたがってくる。
告白はしたの?セシルには会ってる?
そんなローザの質問攻めと、その質問に返答できない自分の愚かしさにローザの言葉がグサリと刺さってばかりだった。
それをセシルは『仲の良い幼馴染み』として捉えてたようだ。
だが、ローザはあくまでライバル。俺もローザが抜け駆けしないように見張りたいのは山々だが、俺は竜騎士団の部隊長なのだ。
戦闘の場以外ではなかなか交流の無い白魔道士団の行動を把握出来る訳ではない。
それにローザは女であり、セシルに近付いても良くて『仲の良い幼馴染み』、悪くて『可愛いカップル』として周囲の好奇の目は避けられない。
だが、俺のこの気持ちを伝える術もなければ機会もなく――
こうして『親友』というポジションに甘んじてしまっているのだ。これでは竜騎士としてのプライドもへったくれもない。
親父が生きていたらさぞかし俺の姿を見て嘆く事だろう。

「…お前こそ、ローザとは会う機会も多いんじゃないのか?」

「そうでもない、かな。ローザもローザで忙しいみたいだし…むしろ、カインとこうしてる時間の方が多いかもしれないね」

俺はそれを聞いて内心ニヤリとして、ガッツポーズまでキメてしまいたくなるほど優越感に浸れた。
だが、クールでポーカーフェイスで通している手前、表には出さないし、俺自身もそんな事はしたくない。
しかしこの悦びをどう表現していいものか……部屋に帰らなくて良かった。と心底思う。

「……あ、ごめんカイン。すっかり忘れてた……」

「何がだ?」

それ、とセシルが指差すのは俺の格好。
今では普段着よりも着慣れてしまった竜騎士の鎧のままだった。
最初は動き難くてこんなので本当に戦いが出来るのかと思っていたが、今ではそれもなんのその。
セシルが指摘するまで忘れていたくらいなのだから。
俺も眠気でうっかりしていた。

「すまないセシル。一旦着替えてから出直してくる」

「え、大丈夫だよ、僕の服貸してあげるよ」

「いや、それはさすがに…」

サイズ的な意味合いもあるが……駄目だ、セシルの服を着るなんて…耐えられるわけがない。

「平気だよ、少し大きめのサイズもあるからさ!シャワー使って良いよ、僕服探してくるね」

「おいセシル…」

と、俺が声を掛けるのも虚しく、俺はセシルに服までご厄介になる羽目になった。
俺の頭の中を駆け巡るのは数多の煩悩の数々。
いかん、このままでは本気でヤバい……何かをしでかしてしまいそうだ。
そうだ、もうここは逃げるしか道は無い。
俺は竜騎士だ。誇り高きリチャード・ハイウィンドの息子だ。窓から飛び降りることくらい造作のない事。
セシルは着替えを探しに行ってる。今なら………
黙って帰ったことは明日、セシルに謝るとしよう。すまん、セシル――




「カインー、お湯熱くないかい?」

「………ああ」

「着替え置いとくから、使ってねー」

「………あぁ」


なんっっって駄目な男なんだ俺はっ!!

何故セシルの部屋のシャワーを使ってる?さっきまでの決意はどこへ行った?
……頭からかぶる湯が、心なしか冷たいような気がした………

「カイン、服どう?小さくない?」

「まぁ、なんとか着れるレベルだな」

「失礼だなぁー、僕だってね、昔に比べたらそれなりに成長してるんだからねー!」

うむ、セシルの服にしてはでかい…むしろ俺のサイズのような気がする。
ゆったりした部屋着だ。なんの変哲も無い。

「…セシル、これは着たことあるのか?」

「一回だけ。でも大きかったからそれから着てないんだ。ズレ落ちて肩とか出ちゃうから」

そりゃそうだろうな。俺サイズになってるから。
だがしかし…その後の話によれば貰い物だそうだ。陛下からの。
どうやってサイズを間違えたのか…目見当にしては大雑把過ぎる。

「あれ?カイン髪乾かしてないの?風邪ひくよそれじゃ」

「俺はいつも放っておいてるから大丈夫だろ」

「そんな訳ないだろー!呆れた!カインそこ座ってて!僕ドライヤーもってくるから!」

こうして俺は介護されているような感じで髪まで強制的に乾かされた。
俺は大して気にしてないが、セシルはまるで自分の事のように怒ってる。

「せっかく綺麗な金髪なのに、勿体ないじゃないか!全くズボラなんだからさ~!」

「セシルに言われたくない」

「なんでー!?僕はちゃんと乾かしてますよーだ」

ぶつくさ文句を言う割には丁寧に乾かしてくれる。
髪が伸びてから乾かすのが面倒になったが、セシルがこうしてくれるなら話は全く別になる。

「不衛生にしてると駄目だってローザも陛下も言ってるじゃないかー」

「陛下は良いが、ローザは別に良いだろ」

「どうして?カイン、ローザと喧嘩でもしたの?」

「…いいや、そうじゃない」

「ヘンなカイン」

ヘン、そうなのかもしれない。
だがローザの名前が出てくると面白くないのは本心だ。
少しあからさまな態度をとりすぎてしまったかもしれない。
俺はセシルに髪をいじられながらそんな事を考えていた。







「カイン、初めて一緒に寝た日の事覚えてる?」

「あれは…十歳の頃だったか」

「そう、カイン色んな話してくれたよね。リチャード小父さんの話とか、その日あった事とか、空の話だったりとか」

「そんな話したか?」

「してたよー、僕ちゃんと覚えてるもの」

何て話してるんだ俺は…しかし、よく覚えてるな……
話した当人が覚えてないのに。

「ね、カインもベッドで寝ようよ」

「いや、俺は床で十分…」

「だめ!風邪ひくから!」

セシルは強引に俺をベッドに引き入れる。
こ、これはさすがに離れないとセシルに何するか解らんっ!!

「おまっ…大の大人二人がベッドで寝れるわけないだろ!!」

「大丈夫!僕狭くても熟睡出来るからさ、気にしないで。ほら!布団かけて、電気消すからねー」

セシルがとうとう電気まで消してしまった。
非常にやばい、やばすぎる。

「おいセシル、これはちょっと……」

「二人の方が温かいでしょ?それじゃ、おやすみカイン」

と、セシルは俺をベッドに入れると即行で眠ってしまった。
だがしかし、俺の不安も眠気には勝てない。今日の疲れと余計に頭を使ったせいで俺もすぐに眠ってしまった。

翌朝、鶏が雄叫びをあげるのと同時に起こされるのは解っていたが、解っていても辛い。







2008.11.01 (c)rlrl.

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