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memory of children

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抱き締める腕が痛みを、心を和らげる

「全てを守りたいから」の後の話です。




セシルが暗黒騎士の鎧を身に纏ってから半年が経った。
カインはセシルと擦れ違い、その後姿を見る度にあの日の事を思い出していた。
鎧同士の擦れ合う金属音と、足音が響くだけ。
その後姿は昔のセシルではなかった。
一人の、逞しい騎士の背中だった。
そうして、カインもセシルに背を向けてその場を去っていく。


セシルはカインの事をよく噂で聞いていた。
誇り高き竜騎士団長、カイン・ハイウィンド。
その働き振りは素晴らしいものだと聞く。
セシルは近々新しく編成される部隊の部隊長に任命される事になっていた。
任命式典は1週間後。
だが、セシルはその舞台に立ちたくはなかった。
出来れば暗黒騎士として、一人で戦場に立ちたかった。
部隊と多くの部下を引き連れて前線には立てないと思っていた。
昔よりも孤独を求めるようになったのは、この甲冑の呪いなのかと、セシルは一人ベッドに腰掛けて考えていた。
でも、セシルの心には一人の後姿がいつも佇んでいた。
竜と心を通わせる、彼の姿が――




「セシルよ、暗黒騎士の甲冑はどうだ?」

「はい、随分と慣れてきました」

「そうか、お前には辛い目に合わせてしまったが…お前がそういうなら私は止めはせんよ」

「…お心遣い、感謝いたします、陛下」

「来週の任命式典、お前の晴れ舞台だ。私も楽しみにしておるよ」

「…有難うございます」

セシルは脱いでいた兜を再び被り、バロン王に深々と頭を下げて膝立ちの状態から立ち上がり、謁見室を出て行った。
暗黒騎士の姿で城内を歩く姿は当初は不審がられたが、今では誰しもが背をぴしっと伸ばして頭を下げてくる。
異様な出で立ちの暗黒騎士の甲冑は周囲の人間にも緊張感をもたらすのかもしれない。
バロン王に会う直前まで整備士に甲冑を見てもらっていたせいで所々ずきずきと傷む。
医師から貰った鎮痛剤を飲んでいるが、まだ痛むような気がする。

「……ル…、……セシル!」

はっ、と気付けば壁に手をついていた。
頭上から降りかかる声で気がついた。

「…カイン…」

「部屋まで送ってやる、手を貸せ」

有無も言わさずセシルの手を引いて塔の階段を上るカインに、セシルはまだ頭がフラついていた。
頭を左右に振り、しっかりしろと自分に言い聞かせる。
覚束ない足取り、混濁する意識。
その意識の中に波紋のように広がる痛み。

「ッ…!!」

「セシル!!」

カインは足を止め、蹲るセシルの身体を支えるようにしてゆっくり階段を上り、部屋の扉を開いてセシルをベッドに座らせる。

「…兜、外すぞ」

セシルは小さく頷き、カインはセシルの兜をそっと外してやる。
久方ぶりに見るセシルの顔は一層青白く見え、痛みを堪えるように唇を噛んでいた。

「何か欲しいものはあるか?」

「…み、ず…」

「水か、待ってろ」

カインは部屋の隅にある水瓶から水をガラスのコップに注いでセシルに手渡す。
セシルは俯いたままベッド側のチェストから鎮痛剤を何錠か取り出して口に放り込むと水で流し込んだ。
カインはその様子を見つめていた。
じんわりと汗の滲む額を拭ってやり、長くなった髪を後ろへと流す。

「…ありがと、カイン…」

「いや…落ち着いたか?」

「少しだけ……」

セシルが呟くようにそう言うと、顔を隠すように再び髪が流れ落ちてくる。
カインはそれを見て己の兜を外し、長くなった金髪を結わえていた髪留めを外す。

「セシル、少しの間だけ横を向け」

「え?なに…」

「結わえてやるから、でもこれは今度返せよ」

カインは慣れた手つきでセシルの後ろ髪を緩く結い上げる。
人に触られることのない、更にはカインに触れられる事によってセシルは少しだけ頬を赤らめた。

「ほら、もういいぞ」

「あ…ありがとう…」

「どういたしまして」

にこ、と微笑むカインに、セシルも目を細めて笑みを浮かべた。
やっと見れたセシルの笑った顔に、カインは少しだけ安心した。

「……カイン、色々噂は聞いてるよ。陛下も…その話ししてた」

「竜騎士団長ってだけで妄想を膨らまして話を大きくしてるだけだ。俺の功績は仲間の功績だ」

「でも、ローザも…白魔道士の中じゃ一番なんだって……二人とも凄いよね…」

「…何言ってるんだ、お前だって来週には新部隊の部隊長だろう?お前もこれから頑張ればいい。…セシルはいい部隊長になる、絶対に」

「…ありがとう」

そんな筈はない。
鎧を着てるだけで苦しむ僕に、誰がついて来るのだろうか。
期待を裏切りたくはない、でも、その期待が重く圧し掛かってくる。
セシルはいつも苦しかった。
だから兜をいつもかぶって顔を隠していた。
誰にも悟られないように、部屋にいるときでさえ、窓ガラスに映りこむ暗黒騎士である自分の顔を見つめているだけだった。

「…カイン、今日はごめん。僕そろそろ訓練にいくから……」

セシルがチェストの上に置いてある兜を被ろうと手を伸ばしたのを、カインの手が阻止した。
セシルの手を掴んだカインの手が、セシルの手をぎゅっと握り締める。
微かに目を見開いたセシルはカインに顔を向ける。
カイン?と声を発する直前に頬を優しく撫でられ、く、と顎を掬い上げられて唇に柔らかい感触がゆっくりと触れた。
子供の頃にセシルがバロン王から貰っていたおやすみのキスや、ローザから貰う友情のキスではない、カインとのキス。
恋人として手を繋ぐこともなかったのに。
ただ、唇同士が触れ合っているだけなのに、セシルの胸は痛いほどに高鳴っていた。
どのくらいの時間そうしていたか、カインが唇を離した。
いつもと同じ仕草でセシルの髪をかき上げる。
もちろんセシルは真っ赤になった顔を見せられるわけもなく、俯いているだけだった。
カインは握っていたセシルの白い手の甲に、今度は口付けを落とした。
セシルは顔を上げて、目の前の金髪の騎士の行為を見ているだけだった。

「…セシルには、俺がいる」

呟くように、セシルにだけ聴こえるように、そう言った。

「…俺は、いつだってお前の傍にいる。……式典には俺も出席するように言われている、だから…お前は胸を張って任に就けばいい」

「カイン…」

「お前には…俺にはないものが沢山ある。それを活かせば、必ずやっていける」

セシルの人望、人を惹きつける笑顔、頭の回転の速さ。
バロン王もセシルの良い所は全て知っている筈だからこそ、新部隊の隊長に任命したのだろうとカインは思った。

「…辛くなったりしたら、俺に話せばいい」

「…うん…」

「痛むなら、我慢するな」

「……うん…」

ぽろぽろと涙を零すセシルを抱き寄せる。


自分を偽る暗黒騎士が心地よくなっていた。
誰にも気付かれることもなく、陛下の命令をこなすだけの兵士は楽だった。
でも、本当は孤独で、寂しくて。
そんな心も知られることもなく、このまま部隊長になると思っていた。
でも、カインの優しさに触れて、心の拠り所ができたようで、心が温かくなった。
痛みも、じんわりと和らいでいくようで、セシルは目をゆっくり閉じた。






「セシル・ハーヴィ、本日をもってそなたを飛空艇団『赤き翼』の部隊長に任命する」

「…謹んでお受けいたします」

セシルは暗黒騎士の甲冑を身に纏い、腰に下げる剣を鞘から抜いて掲げる。
兜の内側から視線を四方に向けると、竜騎士団長として参列していたカインの姿を見つけた。
兜の内側で笑みを浮かべるセシルの想いが通じたのか、カインも微かに口角を上げて笑みを浮かべた。
















恋人設定で40のお題
『28.どんな時もずっと』
2008.11.06 (c)rlrl.

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