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memory of children

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離れていても、消えないもの

十代カイセシ。



兵学校時代のセシルとカインにこんな話がある。
セシルは15歳。
カインは16歳。
小さい頃から一緒だった二人はいつしか距離が離れていき、クラスも離れてしまった事でその溝は大きくなった。
廊下で擦れ違った時に声を掛けるだけ。
そんな日が続いた冬の季節。
カインのクラスとセシルのクラスでの合同実習があった。
動き易いように学校指定の運動着で学校の裏にある大きな森での実習だった。
カインは学校で仲良くなった(と、言っても話をするだけの)友達と一緒にいた。
この日は随分と冷え込んでおり、吐く息も白く、肉眼でも確認できるほどだった。
カインは、ふと背後に視線を向けた。
随分と後ろの方で寒そうに体を縮めて教官の講義を聞いているセシル。
白い頬はほんのりと赤く染まっていた。


「隣のクラスの、あれ…えーっと、誰だっけか?」

「ああ、銀髪のヤツ?」

講義が終わってクラスで着替えていたカインは目の前で繰り広げられる話題に耳を寄せた。

「真っ白な顔した女みてーなヤツだよな、本当に男かよ?」

「さぁ?お前調べれば?」

「んなメンドーな事しなくても着替え見れば早いんじゃねーの?」

「それいいな。男のくせに髪なんか伸ばしやがって気に入らなかったんだよなー」

「そうそう、腰まで髪伸ばしやがって。なぁ、お前もそう思うだろ?」

カインは目の前のクラスメイトが繰り広げる会話にふつふつと沸き上がる怒りを抑えながら「さぁな」と怒りを孕んだ声で答えた。

「つーかよ、今日の放課後誘い出してみるか?」

「ああ、面白そうだな」

カインはそれを聞いてさすがに黙っていられる訳も無く、「やめろ」と声を荒げようとした瞬間。
ガタッ、と大きな音を立ててクラスの扉が開いた。
カインが振り返ると、運動着の上着を顎の辺りまできっちりと寒くないように着込んでいたセシルが足を踏み入れていた。
今の話を聞かれてたのかとカインは眉間に皺が寄っているセシルを気まずい表情で見ていたが、セシルはクラスに入ってくると良からぬ相談事をしていた男子二人とカインの目の前まで歩み寄る。
三人の目の前で上着を脱ぎ捨て、シャツ一枚の姿で教壇の上に備え付けのペンタ立てから鋭利な鋏を引っ手繰るように手にする。
ぎらりと銀色の刃が電灯の光に反射して鈍く光る。
最悪な事態を予想した男子二人がカインの背後まで後ずさる。

「お、俺たちは本気で言ってた訳じゃねーよ!!」

すっかり腰を抜かしてしまった男子の一人は怯えながらセシルの持つ鋏を凝視する。
だが、セシルは髪を一纏めに結っていた髪留めを外し、手にしていた鋏で自分の銀色の後ろ髪を掴んで躊躇無く短く切った。
驚いて声も出ず、止める事も出来ないカインはただ長かった髪が切り落とされていくのを見ているだけだった。
不揃いの後ろ髪もそのままに最後の一房を足元に落とすと持っていた鋏をバンッ!!と教壇に叩きつけるように置いて振り返る。

「これでもまだ足りないか!?僕が女の子なんてっ…なんで君たちに言われなきゃならないんだ!!」

セシルは声を張り上げてそう言うと、そのままクラスを出て行ってしまった。
床に散らばるつい数秒前までセシルの背中に垂れていた艶のある髪の残骸をカインは見つめ、セシルの後を追う。
自分のクラスに戻っている訳も無く、広い学校を走り回って短くなった銀髪の後姿を探し回る。
カインは息を切らせながら周囲を隈なく探し、ようやく痕跡を見つける。
光に反射して光る一本の髪の毛が旧校舎へと続く階段の前に落ちていた。
それも拾い上げ、ゆっくりと階段を上がると、上った先にセシルが俯いて床に座り込んでいた。
バラバラな襟足が微かに風に揺られていた。

「…セシル」

そっと肩に手を置くと、セシルはゆっくりと顔を上げてカインの顔を見た。
だが、何も言わなかった。
寒そうに運動着の上着を引っ張って肩に掛け直すだけ。

「…カインも…」

「ん?」

「…僕の事、そう思ってた…?髪なんか伸ばして、女の子みたいだって……」

セシルは蚊の鳴くような声でカインに訊ねる。
カインは首を左右に振って自分が着ていた上着をセシルの肩に掛ける。

「…お前の事は、誰よりも知ってる」

セシルの隣に腰掛け、そう言った。

「…ったく、もったいねー事しやがって。しかも襟足バラバラだし、陛下がお嘆きになるぞ」

「あ……僕、ついカッーっとなっちゃって…でも、いいよ」

セシルは短くなった後ろ髪を撫でながら呟く。

「…切ろうと思ってたんだ」

「…もう伸ばさないのか」

「うん、だって…長いと色々不便だしさ」

セシルは苦笑いを浮かべ、カインにそう言った。
だが、それでは納得がいかず、胸の中をもやもやさせていたカインはそれを吹っ切るように口を開く。

「なら、俺が伸ばす」

「え?どうして…?」

「イメチェン」

「…髪洗うとき大変だよ」

「んなの気にするかよ」

「乾かすのだって、時間掛かるし」

「いい、自然に乾かす」

「夏は暑いよ?」

「…平気だろ」

カインがそういうと、セシルはふふ、と笑みを浮かべる。

「…なんだよ、笑ったりなんかして」

「カインとこうやって話すの、久し振りだなぁって思って…兵学校入ったばかりの頃は登下校も一緒だったけど……カイン、最近はいつも友達と一緒だったから…」

「…別に友達じゃない、あんな奴ら…お前こそ、クラスに友達いるだろ?」

「…こうやって話出来る人はいない。僕口下手だから……」

そうだった、セシルはさっきの講義の時間も色んな友達の輪から外れて一人だった。
――セシルの事、俺は全然知らないんだな…
もう昔とは違う、今やっと解った状況にカインは口を開いた。

「…放課後、クラスまで迎えに行く」

「え?」

「明日の朝は町の広場で8時だからな」

カインがセシルの方を向かずにそう言った。
セシルはカインの横顔を見つめ、嬉しそうに笑った。

「…うん」

セシルは膝を抱えて小さく呟くように返事を返した。

セシルは、本当に嬉しそうに笑っていた。





翌朝、急に髪を短く切ったせいで風邪をひいてしまったセシルだが、その日以来カインは昔と同じようにセシルの隣にいる。
あの講義の時間に寂しそうに見えたライトブルーの瞳が、いつも笑ってくれた。

「セシル!お前なんでマフラー巻いてないんだよ!」

「え?巻いてるよ?」

「これは巻いてるとは言わないんだよっ、…ほら、こうした方が温かいだろ?」

「本当だ、ありがとうカイン!」

カインはセシルが好きだった。
だからこの年になるとセシルの傍にいるのが照れくさくて、距離をとっていた。
でも、それはどこか胸にぽっかりと穴が空いたようだった。
校内でセシルを見る度に振り返ってその背中を見てしまう……そんな毎日だった。
でも、今は楽しいし、充実していた。
セシルが隣にいるだけで、隣で、笑ってくれているだけで。
カインの心は満たされた。















幼馴染5つのお題
『4.消えない絆』
2008.11.07 (c)rlrl.

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