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memory of children

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『咆哮』

竜と竜騎士




まずい、頭痛がする。

カインは槍から手を離し、兜を取り去った。
頭を殴られるような鈍痛と、耳に残る金属を引っ掻くような不快な音。
長い金髪が頭を振る度に揺れる。
歯を食いしばって痛みを堪える。
頭の奥に響く何かの声が意識を引っ張ってくる。
――このままでは気を失ってしまう。
カインは震える手で傍に倒れた槍を握り締める。
――意識を、保たなければ。
毎晩磨き上げる銀色に鈍く光る刃に空いてる方の手で少し力を込めて握り締める。

「くっ…!!」

じんわりと肉を裂き、刃を伝って床に落ちる鮮血。
ぽたぽたと足元に落ちていく。

俺の底から聴こえる声。
「こっちへこい」と、俺を誘う闇色。
俺の意識を奪い取ろうとする声、手。
――奪われてたまるか……俺は、お前に屈したりはしないっ…!!
じわじわと指が切り落とされるほどの力で刃を握っていたカインの意識を呼び戻す咆哮が、その瞬間響いた。


「…お前か」

カインは少し頭を振りながら外へと出ると、灰色の大きな飛竜が首を伸ばしてカインの方を振り向いた。
先ほどの咆哮はこの飛竜かと、カインは彼の頭を撫でてやる。
数年ほど前からカインが修行をしているこの試練の山にやってくる。
飛竜は警戒心がどの動物よりも強く、誇り高い。
だが、カインにとって竜とは家族も同然だった。
竜騎士だった父リチャードがよく傷付いた竜の世話をしていたせいで、カインも竜と接する機会は多かった。
そして父の特別な『能力』もしっかり受け継いでいる。

「…お前のお陰だ、ありがとう」

頭を摺り寄せてくる、カインよりも何倍も大きな飛竜に笑みを向けて再度頭を撫でる。
何故か竜の気持ちや言いたい事が理解出来るカインは、今日もやってきた彼を追い返したりはしない。
いつも夕日が沈む頃には帰るのを知っているからだ。
カインは飛竜の灰色の体を見つめ、目を細める。

「…今日もバロンの上を飛んできたのか?」

グルル、と大きな猫のように喉を鳴らす彼に、カインはそう尋ねた。
彼は答える訳でもなく、カインの傍にいた。
カインは先ほどの頭痛を忘れてしまいそうなくらいに回復していたが、手の傷は消えるものではない。
手に巻いた包帯を見つめていると、飛竜がそれを見て再びグルル、と鳴いた。



夕日が沈む頃、飛竜は首を伸ばして咆哮を上げると、大きな翼を広げる。
最後に一瞬だけカインの方を振り向き、カインが小さく頷くとそのままどこかへ飛び去っていく。
今日も一日が終わる。
赤い夕日が沈むのを見届け、カインは再び山の中へと戻っていった。

夜、月の見える晩。
月明かりが山肌の隙間から入り込み、少しだけ明りを灯す。
カインの修行は昼よりも夜の方が過酷だ。
誰とも対峙する訳でもなく、ただそれは『己』との戦い。
静かに精神を集中させて、眼を閉じる。


「――カイン、二人だけで話をしよう」


そんな声を掛けられる前に気付けば良かった。
だが、既にカインの意識は『その中』に入り込んでしまった。

「しまったっ…?!」

いつも苦痛に耐え、意識を引き摺り込まれないようにと用心していたのに、今度は何の前触れもなかった。
頭痛や吐き気、己の中の小さな黒い意識。
今回はそんなものはない。本当に突然の出来事だった。
意識の中のカインは兜を剥ぎ取られ、髪留めも切れてなくなっていた。
闇の中から足音が聞こえ、カインの目の前に現れた――己自身。
カインが着ている鎧よりも深く、その存在を表すようなダークブルーの鎧と兜を装備した、『カイン』。
ニヤリと口元を歪め、笑っている。

「油断したか?カイン」

フッ、と鼻で笑う『カイン』。
カインはただ目の前の自分を睨みつけているだけ。

「お前の願いは解っている。何故俺を使おうとしない?俺ならばお前の願いなど容易く叶えてやる。…俺の喜びは、お前の喜びなんだよカイン。解っているんだろう?」

「…お前は俺じゃない。お前はただの欲の塊だ」

「随分な言い方じゃないか。…俺も正直、お前の心の中で燻っているのも疲れたんだ」

カインの眉がぴくりと動く。

「…ここは試練の山。解るだろう?」

「…やめろっ!!」

カインが止めようと手を伸ばした瞬間、その手を強く掴まれる。
ぎりぎりと手首を引き千切らんばかりの力でカインの手首を掴んでいる。
手を掴む相手を見て、カインは一瞬怯んだ。

「…セシル…」

長い銀髪、白い肌、眩い光のパラディン。青い虚ろな瞳がカインをじっと見つめている。
それがカインの手を止めていた。
『カイン』はくくっ、と笑った。

「そうだ、セシル……お前は昔からそうだったな。セシル…セシル、セシル……お前が一番望むもの。お前の光。…お前が一番欲しているもの」

「っ…」

「俺なら、容易く手に入れられる。全てから奪い取ってお前にくれてやる」

「やめろっ!!セシルに何かしてみろ、お前をっ…!!」

「くくっ…お前の本心はそうじゃない。俺の言葉に揺らいでいるはずだ。…そう、昔は一緒だった。いつも隣にいた……お前のセシルを奪ったのは誰だ?」

「違うっ…」

「仲間、友、兄弟、親……そう、愛だ。わかってる、あの女がお前のセシルを奪ったんだ」

「違うっ!!」

「何も違わない。お前から奪ったのはあの女だ。忌々しいあの女…眼を開けろカイン、あの女さえいなくなれば、セシルはお前を見てくれる。…永遠に」

カインの脳裏には幼少の頃、学生時代の頃、数年前のセシルの顔が浮かんでくる。
いつも自分に向いていた笑顔。
だが仲間が出来るとその笑顔は自分だけのものじゃなくなった。
そして、最後には――


「――お前のセシルを、ローザから殺してでも奪い取ってやる、カイン」


カインの手首を掴んでいたセシルの唇がそう動き、手が離れた。
強い力で体を後ろへ引っ張られるような感覚の後、眼を開いた。
周囲を見回せば試練の山の中。
だがカインには解っていた。
己の中から抜け出したあの歪んだ感情を――

カインは山を下りた。
少し遠くの村で装備を全て違うものに変えた。
兜の変わりにターバンを巻き、鎧の変わりに旅人の衣を纏い、槍の変わりに剣を手にした。
『バロンの元竜騎士』を捜す為に。

兜で隠していた顔を曝し、村を出た時には旅人の装束に変わっていた。






それからまた数年が経った。
世界中を歩き回り、ある日飛空艇が落下するのを見つけた。
あの飛空艇――『赤き翼』。
カインは足早に森の中へと入り、落下した地点へと足を向ける。
立ち込める煙の傍には全壊した赤い飛空艇。そして、動かなくなった隊員。
カインは小さな声が聞こえる方へと体を向ける。
少し先の平原に少年が魔物と対峙していた。
体力を消耗して襲われる瞬間に剣を抜き、魔物を斬り捨てた。

「…怪我はないか?」

「あ…はい、ありがとうございます…」

剣を収めると、少年はカインに頭を下げる。
見慣れない少年だが、甲冑はそれらしいものを装備しているが、剣や盾は初心者向けのものだった。
カインはそのまま、少年と付き添い、バロンへと向かう事になった。

バロンに到着すると、静か過ぎる気配にカインは何か嫌なものを感じていた。
門番の兵士や、擦れ違う兵士は同じ言葉を繰り返すだけ。
カインは城の様子を見てくると駆け出した少年を見送り、王の間へと足を向ける。
――誰もいない。
玉座はカラだったが、周囲を見回していると声がした。

「…誰だ」

カインが振り返ると、王が玉座に座っていた。先程までは確かにいなかった。

「…何者だ」

「…旅の者だ」

「薄汚れた物乞いならすぐに出て行け。私は忙しいのだ」

「………」

「世界の平和は、我がバロン王国が守らねばならない」

「…邪魔をした」

見知った銀髪、見知った声。
カインは眉間に皺を寄せて王の間を出て行った。
出て行った先の廊下で合流した少年を連れて城を出た。
あんな変わり果てた姿は見せたくなかった。

――セシル。

――何故なんだ…

「あの、父を知っているんですか…?」

「…いいや、だが私にはなさねばならん事がある」

「…一体、それは…」

「…奴を…倒す。…元バロンの竜騎士……」

「…それって…父から話はよく聞いています。何故、あなたは……」





俺はまだ知る由もない、この先の運命。

だが、俺はやらねばならぬ宿命は目の前にある。

己を超え、悪しき芽を摘み取り、そして俺は――


俺には聴こえる。
あの飛竜の咆哮が。

俺に戦えと、奴を倒せという声が。



2008.12.03 (c)rlrl.

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