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memory of children

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雨の中で

兵学校入学前のカイセシ。





俺は昔、セシルが嫌いだった。



兵学校への入学が既に決まっていた俺は家に帰る為に席を立った。
今日は昼頃から天気が悪くなりだして、つい先程雨まで降り出した。
親父が持って行けと押し付けてきた折り畳み傘に感謝しながら階段を降りた。
擦れ違うクラスメイトに軽く挨拶をして靴箱まで来ると、雨空を見上げる後姿を見つけた。
襟足より少し伸びたウェーブした銀髪。……こいつにだけは会いたくなかった。
昔から一緒にいる、セシル・ハーヴィ。
バロン陛下がどこからか拾ってきた子供だった。
ローザがやたらこいつに気を掛けているのを知っているから、俺はこいつが気に食わなかった。
虫も殺さないような顔をしていても成績は俺とは肩を並べるほど。
運動神経だってそこそこ良い。
どうせ、陛下に可愛がられて調子に乗ってるんだろ。
そんな金持ちはこの国では兵士にすらなれないのを俺は知っている。
だからこいつもそんな奴らと同じだと思ってた。
今だってそうだ。綺麗なお洋服が汚れるのが嫌でどうしよう、なんて思ってるに違いない。
俺はそのままこいつを放っておいて先に帰る気だった。
少し音を立てて靴を靴箱から出すと、驚いて振り返ってきた。
人形みたいな顔で、ビー玉みたいな両目で俺を見てる。

「…眺めてたって雨が止むわけないだろ」

「………」

だんまり、か。はっきりしない奴だ。イライラする。
俺はさっさと靴を履き替えて傘の止め具を外す。
バロンの雨はとても冷たい。
雨の中を走って帰るにしても、こいつの家はバロン城だ。ここからでもそれなりの距離はある。
それに、こんな大雨じゃ濡れて帰るなんて風邪を引くのは当然だろう。

「…迎えに来てもらえば?陛下に連絡すれば誰か迎えに来てもらえるんだろ?便利でいいよな」

俺は嫌味を込めてそう言ってやった。
真横の白い顔が少しだけ俯いた。まぁ、俺の知ったことじゃない。
俺が藍色の傘を開いた瞬間。
――こいつ、トチ狂ったか?
そう思う間も無くこの雨の中を走り出しやがった。
俺はまさか、と呆然として校門を出て左へと曲がった後姿を無意識に追いかけた。
――そんな、嘘だろ…?!
俺はクラスの中でも足の速さはトップだが、こいつはどうだ?
俺が全速力で走ってるのに全然追いつかねぇ!!
やっと白くて細い手首を捕まえてアイテムショップの軒下に引っ張り込んだのは大分走った後だった。
傘を持ってる俺までズブ濡れになっちまった。

「あ、あの…」

俺はハッ、と気付いて握り締めていた手首を放した。
それから、俺はそいつに大声で怒鳴ってやった。

「…バッカじゃねーの?!雨の中走って帰らなくたって良いだろ!!」

「だ、だって傘が無かったから……」

「だからっ……!!」

「お城の人にこんなつまんない事頼めないよ!それに傘を持って今朝城を出なかったのは僕の責任だ!」

こいつ、こんなはっきりモノを言う奴なのか…?
子供の頃はもう少し大人しかったのに……
俺は昔とのギャップにまた呆然としてしまった。
そうだ、俺はこいつを昔の小さい頃のままの姿で見てたんだ。
馬鹿はどっちだ?……俺、だったんだ…馬鹿野郎……
はぁ、と額に手をついて溜息をつく俺の隣から、こいつが逃げ出すことは無かった。
さっきと同じように空を見上げているだけ。

「……なんで僕を追い掛けてきたの?」

「…別に。…意味なんてねぇよ」

「ふぅん……」

こいつはそう言うと、また黙り込んで空を見上げていた。
いつもふわふわ揺れてる髪は、濡れてぺたんとなってしまっている。
俺は濡れた制服の水気を意味をなさないが、少しだけでもと思って払い落とした。

「…君とこうやって会話するの初めてだね」

「…そうかもな」

「そうだよ、だって僕は君に嫌われてるんだから」

俺は驚いた。
眼も合わせずに会話をしていた俺は、思わず横を向いてしまった。

こいつはにこっ、と笑っているだけ。

「でも仕方ないよね、僕は孤児。君とは住んでる世界が違うんだから」

「お前、そんなの気にして……」

「気にしてるんじゃないけど…小さい頃からそう言われてると慣れちゃうよ。”陛下に可愛がられて図にのってんじゃねぇ”、”汚い孤児だ”、”お前なんか兵士にすらなれない”」

なんということか。それは全て俺が思っていた事と同じだった。
俺は、そんな連中と同じだって言うのか…?
口だけ達者な貴族と、同じ考え方をしてたのか…?
…俺は、とんだ捻くれ者だ。
こんなの、親父に見られたら殴られるだけじゃ済まない。

「…それはお前に嫉妬してるからだ」

「…嫉妬?」

「頭が良くて、運動神経も良いお前に対しての”ヒガミ”だ」

――俺がそうだったように。
何だかんだで、俺はこいつを…いつも見てたんだな……
いつも背中を見て、悔しがって…羨ましかったんだ。

「…じゃあ、僕は君に”嫉妬”してるんだ」

「は…?」

「君って、成績いつも僕と同じくらいだし、運動神経もいいし…足が速いので有名だよ。……僕と違って人気者で…そんな君が羨ましかったんだよ」

「………」

「廊下とかで擦れ違うたびに、僕は君の背中ばかり見て、”僕も負けてられない”ってさ」

それにしても、ここまで同じ事を考えているとは……少し変な気持ちだ。
どう反論していいのか解らなくなっちまう。調子狂うな……

「…ね、君は今の学校卒業したらどうするの?僕は先週兵学校の試験パスして入学が決まったんだ」

「ああ、俺も…」

「そうなの?じゃあ来年も一緒なんだ。…よろしくね」

「あ、ああ……あのさ、その…”君”って呼び方止めてくれるか?呼び捨てで良い」

「解った。僕も”セシル”でいいよ、カイン」

改めて名を呼ばれるとこれまた妙な感じだ。どうしたんだ、今日の俺は……

「…よろしくね、カイン」

「…こちらこそ」

セシルが差し出してきた手を取り、初めて握手を交わした。

「(ほっそい手…)」

力を入れると折れてしまいそうなほど華奢で、白い手で交わす握手に力が入らなかった。



俺たちはこうして初めて”出逢った”。
その次の日は、案の定お互いに風邪を引いて熱を出して学校を休んだ。
陛下にお叱りを受けると思っていたが、親父は陛下に呼び出されることはなかったし、俺も親父にはそれほど怒られなかった。
風邪が全快してから俺の毎日は変わった。
セシルは何かと俺の所へ来るようになったのだ。。
隣のクラスなのに、休み時間、昼飯の時、放課後まで。
徐々に知っていくセシルは見た目どおり穏やかで優しく、でも強くて頼り甲斐があった。でもどこか抜けている所がある。
でも、笑った顔が魅力的で、俺は何度もその顔が見たいと思っていた。
セシルが笑うと癒されるし、俺も釣られて笑ってしまう。

それがとても、幸せだった。



2008.12.11 (c)rlrl.

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